​“名も無きビジネスシューズ”

「良い靴を作る為に、好材料と高いレベルの技術を用いる……そんなのは説明するまでもない大前提。

 ただ、材料、技術、構造、ラスト、作り手の審美眼と表現力、および思考、これらはすべて、一足の靴を構成する一部分に過ぎない。

 大事なのは、これら全ての要素が正しくかみ合って、一足の“趣きある”靴が出来上がるのだという事。

私が売りたいのは特定の材料でも、技術でもない。“趣き”である。

“趣き”の無い靴は、例えダイヤモンドが埋め込まれていても、何の価値も持たないであろう。」

 

――“名も無きビジネスシューズ”、名も無き職人 based in CHINA.

<名も無きビジネスシューズ新規受注暫時中止のお知らせ>

 日頃よりご関心をお寄せ頂いているお客様におかれましては大変恐縮でございますが、2020年の年明けから、名も無きビジネスシューズの新規受注を見合わせております。

 オーダーストップの理由はいくつかございますが、​納期面・採算面の調整が主たるものです。まずは新規受注を止めバックオーダーの消化に集中する事で、品質の上昇+人員体制の変動により大幅に狂ってしまった納期を、正常の範囲内まで戻していく必要がございます。また、上がりに上がってしまった靴のクオリティに対し、いよいよ受注価格が見合わなくなってしまったというのも大きな要因です。元々作れば作るほどレベルアップしていく職人でしたので、これまでも状況に応じ段階的に受注価格を上げる措置を取って参りましたが、正直追いつかなくなってしまいました。直近の状態では、オーダーを承れば承るほど、職人も窓口であるLEATHER PORTも苦しい状況に陥ってしまっております

 名も無きビジネスシューズ職人がLEATHER PORTを通してデビューを果たしてから、およそ2年半が経ちます。実を申し上げると、2年半前は、彼にこれだけのポテンシャルが潜在している事は予想出来ませんでした。ただならぬ才能の片鱗は感じておりましたが、ここまで化けるとは想像が及ばなかったというのが正直なところです。それは他ならぬ職人自身も同じで、お客様からオーダー頂いた靴を製作しているうちに彼自身“もっと出来る”事に気づき、靴が納品される度にクオリティが飛躍的に上がるという状況が続いて参りました。

 短期間のうちに靴の品質が向上する事自体は素晴らしく、本来もちろん歓迎されるべき事です。しかしながら、次第に職人側で当初計算してくれていたコストでは採算が合わなくなり、一足当たりを仕上げる時間も伸び……その度に工房を救済する意味でも、価格改訂と納期改訂とを、繰り返して参りました。実は昨年立て続けにお弟子さん達が工房を離れてしまったのも、日々レベルが上がっていく造り込みにお弟子さんたちが技術的・精神的限界を感じてしまった事が主要因です。


 工房存続の為にも、ここでストップをかけ、一度空白期間を経て受注体制全体を見直してあげる必要がございます。なお受注再開については、それが半年後になるのか1年以上あとになるのか、また再開時にはどのような受注体制でリスタートを切るのか……現段階では我々サイドでも具体的な見通しが立っておりません。空白期間に職人がどれだけリズムを取り戻せるかを注視しつつ、状況に応じて体制を立て直していく事になりそうです。

 日ごろ工房の展開を楽しみにして下さっている皆さま、またオーダーをご検討頂いていたお客様には大変申し訳ございませんが、何卒ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。職人と共に、必ずより健全な状態での復活を果たせるよう、精進して参ります。

 

2020年1月9日  LEATHER PORT代表 井熊


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